■BIGINING■

★HAMLET MACHINE結成のいきさつは?
ISSAY 「'91年の初夏のある日に僕がTATSUYAに電話して、“元気? 最近、どうしてる?”って」
TATSUYA「ウソつけ、このヤロ−(笑)」
ISSAY 「ちょうど、TATSUYAはその頃、ALLNUDEを組もうとしていた時期で、“ほかにもゴシックっぽいバンドを考えてる”って言うから、“じゃあ、俺とやろう”って」
TATSUYA「もっと重大なネタがあるじゃない?」
ISSAY 「(苦笑)いや−、それを言うともっと古い話になる。そもそも、知り合ったときにはTATSUYAはCELLULOIDっていうバンドを博多でやってて、僕はDER ZIBETをやってて、ツア−中に九州の小倉で対バンやったのがいちばん最初の出会い」

★それが今から何年前のことですか?
TATSUYA「'86年」
ISSAY 「で、そうこうしている内に東京でデルジがイベントやったときにCELLULOIDとセッション・バンドを組んで出ることになって、そこで初めてTATSUYAと一緒にステ−ジに立った」
TATSUYA「そう言えば博多でもやったな」
ISSAY 「うん。で、打ち上げで大盛り上がりになって、TATSUYAが酔っぱらった勢いで“俺は絶対に人のバックじゃギタ−は弾かないけど、オマエのバックなら弾いてもいい”って僕に言ってしまった。僕はそういう人の弱みを一生、覚えてるタイプだから(笑)」
TATSUYA「当然、俺はすっかり忘れてたんだけど」
ISSAY 「それから、5年以上たったある日、新たにバンドをやるために東京に出てきたTATSUYAに僕が電話して、“あのとき、オマエ、俺のバックだったらギタ−弾いてもいいって言ったよな”って」
TATSUYA「そ、そんなこと・・言ったかもしれないって(笑)」

★HAMLET MACHINEのコンセプトは?
TATSUYA「無機質なビ−トで、人間には不可能なグル−ヴを出したいっていう のはあった。2人ともゴシックが好きだったから、音から熱気を排除したときに残る怨念を出せたらなっていうのもあったし」
ISSAY「打ち込みに関しては、すべてのパ−トをTATSUYAが出来るから、2人だけでも可能だなって。だから、機械と共存するロック・バンドというのがコンセプト。当初は生のバンドにも変換可能な音だったから、何度か生HAMLET MACHINEとしてライブをやったけど、情け容赦ない機械のビ−トがやっぱり、俺 たちには合ってると思った。その基本に今回、立ち返ってる」

★バンド名の由来は?
ISSAY「それはある日、TATSUYAにイタリアの前衛劇団の演劇のタイトルで“HAMLET MACHINE"っていうのがあるんだけど゛、面白いと思わない?"って言われ て、“それ、バンド名にしちゃおうって 」
TATSUYA「ハムレットっていう言葉自体、ISSAYに直結するイメ−ジが俺の中であった。しかもマシ-ンだから、ピンときて・・」
ISSAY「だから、さっきのコンセプトに付け加えるとすれば、ゴシックなロマ ンティシズム。それとサイバ−な要素だね」
TATSUYA「あとは、この混沌とした終末感を突っきって、清算して次に進んで 行く感覚というのがあった」
ISSAY「それはデカかったね」
TATSUYA「第3者から見た世紀末感ではなく、自分たちがそのど真ん中にいる感覚。それを高速で突っきって新しい次元にいる音楽をやりたかった」

★初めてつくったオリジナル曲は?
ISSAY「『讃美歌』だね」
TATSUYA「結成して、すぐにつくった曲」
ISSAY「結成してすぐにライブを決めて・・当初はカヴァ−ばかりで演るつもりだったんだけどね」
TATSUYA「俺が原曲とはかけ離れた凶悪なアレンジをした音源をISSAYに聴かせたら、欲が出ちゃったっていう」
ISSAY「これならオリジナルも出来るなって。その頃にビクタ−から「DANCE TOO NOISE」っていうオムニバス盤に参加しないかっていう話が持ち上がったんだけどオリジナルは『讃美歌』しかなかった(笑)。『Dance Babyronia』の原型もあったけど、あれはひょうたんから駒みたいに出来た曲で・・」
TATSUYA「そう、そう。ヴェルベット・アンダ−グラウンドの曲をアレンジし てたら、例によって、どんどん原曲から離れていっちゃって、もったいないからオリジナルにしちゃえって(笑)」
ISSAY「メロディをつくって乗せたら、完全なオリジナル曲になった(笑)。 でも、『讃美歌』はハムレットにとってデカい曲になった。このバンドの方向性を示唆してくれた曲でもあるし」
TATSUYA「確かに。『讃美歌』がなければ、ここまで続いてないと思う 」

★なぜ、『讃美歌』というタイトルに?
ISSAY「詞が完成して、タイトルだけ決まらなくて、TATSUYAに“讃美歌みたいなタイトルがいいんだけど・・って言ったら、“それでいいじゃん”って」
TATSUYA「俺、何でも大ざっぱだから(笑)」
ISSAY「いや、バンド名もそうだけど、TATSUYAの言葉の感覚は非常に鋭いからね。“うん。これは新しい讃美歌かもしれない”って」
TATSUYA「どんなにサイバ−な曲だとしても、ハムレット・マシ−ンの曲には 、どこか宗教性がただよってる。そういう意味でも、始まりの曲として『讃美歌』は重要だと思う」
ISSAY「ハムレット・マシ−ンを象徴している曲だね」

★活動が不定期な理由は?
TATSUYA「そもそもは2人とも自分のバンドを抱えているボ−カリストだった からっていうのがある」
ISSAY 「単純にスケジュ−ルが合わなくて出来なかったこともあった。あと、2人とも腰が重いんだよ(笑)」
TATSUYA「ハムレット・マシ−ンの場合、仕込みに時間がかかるし」
ISSAY「実際、曲をつくるのも大変なんだよね。普通のロック・バンドはスタジオでのセッションで曲をつくっていけるけど、TATSUYAの自宅での打ち込みの作業でつくっていくから」
TATSUYA「その分、誤解する要素は少ないけどね。バンドだとスタジオで最初からデカい音で作業していくから、レコ−ディングの段階で初めてクリアになることがあるんだけど、こういう形態だとスピ−カ−から出てくる音をヘッドホンでつねにチェックしながら作業していってるから、お互いに楽曲に対して違う解釈をしていることはほとんどない」
ISSAY「そのかわり、自宅での曲づくりがほとんどレコ−ディングと近い状態 になるから、ライブをやるまでに時間がかかるっていう」
TATSUYA「それと、加速しながら終末を突っ切っていくためには、どんどん自 分たちを研ぎ澄ましていかなければならない。バンドなら10年前のアレンジでそのまま演ってもいいと思うけれど、そこは機械の容赦ないところで、つねに一歩先をいかないとっていう気持ちがある。「讃美歌」みたいに完成してしまっている曲は別としてね。だから、今はISSAYも俺もより加速していきたいという気持ちがある」

★3年ぶりに再起動した理由は?
ISSAY「本当は去年の夏に始めるつもりだったんだけどね」
TATSUYA「ボ−カルの人が身体こわしてたから」
ISSAY「(苦笑)身体はこわすわ、スケジュ−ルは目茶苦茶だわで大変だった 。で、今回、なぜ、やろうと思ったかって言うと、当初、僕たちがハムレット・マシ−ンを始めたときの世界観がそのまま現実の世の中と重なってきちゃったから、“これはやらなきゃ”って。10年前に難解だったり、暴力的すぎると言われた表現が普通の世の中になってきちゃったからね。それと、もうひとつは機械でやることの意義をより明確に提示できる時代になったんじゃないかっていうのがあった」
TATSUYA「今だからこそ、コイツが発する言葉や吠える内容によって救われる 人間がたくさん出てくると思うし」

★過去と現在のハムレットのいちばんの違いは?
ISSAY「いちばん違うのはビ−ト感」
TATSUYA「俺の側から言うと、サウンド面でのノウハウやスキルは格段に進歩 しているし、10年前に実現できなかったことが実現できてる。ISSAYも以前 はどこに相手が居るかわからない闇に向かって吠えてたのが、今は相手が居るという確信を持って言葉を発していると思う。始めた頃が“誰かに届くだろう”と思ってやっていたとしたら、今は“届くはずだ”と思ってる。それは音に関しても同じことが言えると思う」
ISSAY「その通り。音の面ではより機械でないと再現できないものになってい て、マシ−ンの威力がより発揮されてる」
TATSUYA「容赦ないグル−ヴが切迫感や焦燥感を生み出してる。それがハ ムレット・マシ−ン本来のコンセプトにもつながっていると思う」

[BIGINING 完]
〈TO BE CONTINUED〉