『イーストウッドin桂浜』


高知の中学生時代、私はクリント・イーストウッドのファンだった。
あの、ダーティーハリーのクリント・イーストウッドである。

ある朝、川島が俺の席に来てこう言った。
「宮下、今月のロードショー見たや?」
「いや、まだ見てないけど」
「今度、クリント・イーストウッドが桂浜で撮影するってよ」
「マ、マ、マジや〜」

私の頭の中は坂本龍馬よろしく桂浜にたたずむイーストウッドを夢想しては、
何やら闇雲にこうしてはいられない気分になったのである。

その日の帰り道、私は早速ロードショーを買い、胸に抱いて帰った。
そして巻頭グラビアから読者のページに至るまで、それこそ隅から隅まで読んだのであった。
しかし、その記事は見つけられなかった。

翌朝、川島に私は聞いた。「クリントイーストウッドの記事、今月号よね?」
そうすると、川島の方がびっくりして「おまえ本気にしたがか....?」

やはりクリント・イーストウッドに桂浜は似合わない。