|
|||
![]() |
|||
『わんこそばのシレツな戦い』 |
|||
|
|||
うちは小学校時代岩手の盛岡市に住んでいた。盛岡といえばわんこそばである。
お椀の中のそばを食べ終わると後ろに控えているおばちゃんが「ハイチャンチャン、ハイドンドン」などと言いながら、お椀の中にお替りのそばを滑り込ませる。そのタイミングは絶妙で、もうそばを投げ入れて何十年という職人の技である。蓋を閉めればそれで「ごちそうさま」なのだが、そうそう簡単に「ごちそうさま」にはしてくれない。蓋をしようとしては隙間から入れられ、食べてはまた入れられる。 もう、こうなると食の格闘技である。おばちゃんの目を盗み、どうにか蓋をしたい...しかし敵もさるもの、こちらの作戦などお見通しである。 しかし、こちらももうお腹がパンパン、既にベルトは緩められ、頭は蓋を閉めることだけ。蓋を閉めるためにそばをかき込み、蓋を手にしたときにはお替りを入れられるという地獄の悪循環である。 そしてとうとうその時は来た!おばちゃんが、隣に座っている兄のお椀にそばを投げ入れた瞬間、私は残っていたそばをかき込み、蓋を手にした。背中でおばちゃんの目がキラリと光った、手首のスナップを利かせておばちゃんは私のお椀の隙間を狙う。しばらくの間、沈黙が流れた。家族皆の視線は私のお椀に注がれていた。私とおばちゃんの戦いの行方は......。 私のお椀には見事に蓋がされていた.....私は勝ったのだ....。 しかし、蓋をした私の手の上にはそばが乗っていた。 家族はそれを見て大笑いし、私もそれに釣られて吹き出しそうになった。 しかし、口の中にはかき込んだそばが......私は吹き出すまいと口を押さえたが、無情にも鼻からはそばが飛びだしていた。 慌てて前かがみになり鼻を押さえたら今度はお尻からオナラが..... こんなにもカッチョワルイ話を嬉しそうに友人にふれまわる私の親っていったい.....。 |