『じいちゃん鼻血ブーの大混乱』


それは私がまだ小学生だった頃、
今は亡きハイライトとコーヒーが好物の和歌山のじいちゃんもまだ健在だった。

じいちゃんと一緒に旅行に行った時の事。家族みんな列車の出発を待っていた。
「おまえらなんか欲しいものはないか?じいちゃんが漫画でも買ってきちゃろ。」
じいちゃんは孫達(ウチらね)の為にキオスクへと向かっていった。
「おまえら漫画好きじゃろ、ほれっ!」
家族中の視線がその漫画に注がれた。じいちゃんが僕と兄に買ってきたのは大人向けの青年誌だった。

母がすぐに「おじいちゃん、それ女の人の裸が載ってるじゃないの!」と取り上げようとした。
しかし、おじいちゃんは今更後には引けない。

「いやらしいところは破ればいいんじゃ!」

じいちゃんは僕たちの手から青年誌を取り上げ、
グラビア写真やエッチな描写のあるページをビリビリと破いていく。
にぎやかな電車の中で僕たちだけは破かれていく青年誌から目を離せなかった。
「これで、エエじゃろ」
僕たちの手には半分の厚さになった漫画が渡された。

母はもう何も言わない。
じいちゃんの気持ちは嬉しかったけど、僕の読みたい漫画はこんなのじゃない。
でも、今更新しい漫画を買いに行ける空気じゃないのは僕にもわかってる。

僕らは面白くないうえにストーリーが途中でとぎれとぎれで理解不能な漫画をじっと読んだ。
そして4コマ漫画だけは何度も何度も読んだ。

これがじいちゃんの「鼻血ブーの大混乱」な思い出。


関連グッズ。フィギュアが特に素敵。
http://www.monomagazine.com/monoonline/scripts/newsreports/t-zippo.asp