『青い自転車』


岩手の盛岡市に住んでいた頃の事、小学校の夏休み、私は毎朝のように5時頃からある集会に出かけていました。
その名も「おはようサイクリング」
何をするかというのは、言わずもがな、早朝からサイクリングをするのです。
夏と言えども東北の早朝5時、人気(ひとけ)もなくモヤモヤです。
これに参加している子供の自転車には誇らしげに三角の旗が付いているのでした。その旗には「おはようサイクリング」のマークが、もちろん私の自転車にも。
その集まりは引率の大人がいたことから考えて、市の主催かなんかだったんでしょう。目的地は毎回違って、だいたい片道1時間ぐらいだった気がします。もう、その「おはようサイクリング」が楽しくて参加してたかどうかも思い出せないんですけど、ある目的地で飲んだ湧き水が、これ以上ないほど冷たく透明で、とてもおいしかった事を覚えてます。みんな「うまいべ、うまいべ」と言って争うように列を作りました。
帰りはみんなお腹がドブドブでえらく辛かったのでした。

皆勤した子供にはすばらしい皆勤賞のプレゼントがもらえるということでした。別にそれが欲しくて通ったわけではないと思うのですが、そこは子供。くれるというものはとにかくほしい。意地でもほしい。
皆勤した最後の日、みんなの手には「おはようサイクリング」メダルの付いたループタイが握り締められていました....

まあそんな話はともかく、そのころ乗っていた自転車は青い子供用自転車でした。その前に乗っていたのも青い子供用自転車、その前は青い三輪車、男の子は必ず青です。
そしてその3台はすべて兄からのお下がりでした。

今日の昼、定食屋で生卵を混ぜながら、ふと思い出しました。
そういえば母がたまごご飯を作ってくれる時、生卵をかけるのはいつも私が先でした。残った分を兄のご飯にかける。
後にかけるほうが黄身が多い。
先にかけるとはいえ....あれも一種、逆お下がりだったのか....