『マス』


美術予備校時代、狭い部屋をカーテンで二つに区切り、かたや静物鉛筆デッサン組、かたや石膏像木炭デッサン組に別れ、デッサンを描いていた。

静物デッサンをしていた内野が、木炭デッサンをしている私にカーテンの向こうから話しかけてくる。

「宮下〜、おまえマスば、かききるや?マスば、かくとは難しかね〜」

部屋は水を打ったように静かになった。
内野はそれでも畳みかける。
「なぁ〜、宮下〜。おまえマスば、かききるとやって聞きよろうもん!」
「なんで返事せんとや〜!。マスば....」

彼は急に黙り込み、顔を真っ赤にして一心不乱に升を描きだした。
(下ネタ御免)