『無人島ツアー1』


たまには暖かいところでも行ってみるかって感じで、突然セブ島に行く事を決めた。
なにせ今まで行った外国といえば、厳冬のイギリスバックパック旅行だったり、極寒のチェコバックパック旅行だったり。世間様で言われているようなリゾート旅行などという旅を一度もしたことがない。一度はそんなお気楽旅行がしてみたい。
しかし、いざ行く事を決めても、リゾート旅行初体験の二人、いったい南の島行っていったい何をして過ごせばいいのか。
なにせまずスポーツとは、まったく無縁。潜るなんて気もさらさら無い。
ということは、やることは一つ。プールサイドで本読みながら、小さな傘の付いたトロピカルカクテル飲んじゃったりするに決まっている。もう、傘でテーブルが埋め尽くされるぐらい飲んで飲んで飲まれても飲む。
しかしだ、それだけではあまりに寂しすぎる。飲むだけやったら、なんも南の国まで行かんでいいやん。
う〜ん、南の島らしい事せなな〜とパンフを見ていたら、無人島ツアーというのを見つけた。
「これどう?無人島、行ってみる?いいかもよ〜、無人島。だってさ、誰もいないんだよ。夕方舟が迎えにくるまで、島に取り残されてさ、ヤシの木陰かなんかで波の音聞きながら本読んでボッ〜っとするの。いいよね〜無人島。ちょっと島を探検してみたりしてさ。」
もう夢は勝手に膨らむばかりである。
そしてセブ島豪華リゾート旅行は決行された。

セブ島に到着した翌朝、早速今回のメインエベント無人島ツアーである。
浜辺に歩いて行くとすでにそれらしいボートが用意してある。大きさはエンジン付き10人乗りという感じであろうか。
ガイドの人が私達を見つけて「ミッヤシッタサ〜ン」と手を振っている。
舟に近づいて行くと、周りには10人ぐらいの現地の人々がたむろしている。
そして私たちがボートに乗ろうとすると、その中の一人がすばやくボートに飛び乗り、私に手を差し伸べてくれた。
「おおっ、この上げ膳据え膳なところがリゾートって感じやな〜」私達二人は慣れない接客に戸惑いながらも船に乗り込んだ。
いざ無人島に向かって出発!と思ったら、たむろしていた人々がぞろぞろと私達のボートに乗りこんでくるのである。
君たち、このボートに乗っても誰もいない島にしか行かないよ。何にも無いよ。
しかし、皆まるで当たり前のようにずんずん乗り込んでくる。
う〜ん、そうか。これはきっと相乗りってやつだな。きっと近くの島に送ってもらうんだな、うんうん、いいよいいよ。皆さん乗りなさい。
そしてボートはいざ無人島へ。ザブンザブンと白波を立てながら進んでいく。なかなか快適である。

そして、目的地であろう島がだんだん近づいてきた。「ミッヤシッタサ〜ン、無人島ツイタネ」
おおっ〜、ここが無人島か、いざ上陸!
すると乗るときに手を差し伸べてくれた人がまたすぐに走り降りて、手を差し伸べてくれる。「ああ、すまないすまない」そして、二人が降りた後も彼の手は下がらない。ああ、チップね。どうもありがとう。じゃあ、あとで迎えに来てくれたまえとボートを見ると、一緒にやってきた現地の人たちがぞろぞろと降りてくる。
そして私が「君達、ここは無人島だよ」と皆に声をかける間もなく、早速ヤシの木陰でがやがやとトランプなどに興じ始めている。
皆さんは、いったいここに何しに来ていらっしゃるんでしょうか....。すると、中の何人かが近づいてきて、「コーラ飲まないか」「ゴハンいらないか」口々に聞いてくる。
そうなんである。彼らは、私たちに何か売ったりチップをもらうために、ぞろぞろと付いてきたんであった。客二人に売り子が10人。
それにしてもだ、ラジカセをかけ、大人はトランプに興じ、子供は周りを走り回る、このにぎやかな島。これのどこが無人島なんじゃい!これじゃあ、ぜんぜん無人じゃないやん.....。
嗚呼、にぎやかな無人島ライフ....。