『無人島ツアー2』


まあ、しょうがない。にぎやかな無人島ライフ。
しばらくすると、また二人の男がやってきて「シュノーケリングしないですか?」と聞いてくる。
「ぼくらボート出す。水中メガネと足ヒレとシュノーケル貸す。海きれい。」
まあ、せっかく海来たし、ちょっと覗いてみっか。島もすでに無人島や無いしな。
「じゃあ、お願いするよ」
そして、4人でボートに乗って海に出た。男の一人が営業担当で日本語混じりに英語を話し、もう一人が肉体労働担当である。もちろん、肉体労働担当がオールを漕ぐ。
「じゃあ、ここにイカリ降ろすから、シュノーケリングしましょう。」
私たちは海へと泳ぎ出た。
最初のうちは「あっ、あそこに魚が...」なんて楽しんでいたんだけど、すぐ飽きて「サンゴ礁ってよく見ると気持ち悪いね」などと言あっている二人。ほとほと南の島と折り合いの悪い二人である。
「もう、海はいいや」とボートに戻ろうとすると「まだ、早い、海きれい、もっと楽しんで」と言われ上げてもらえない。しぶしぶもうひと泳ぎ。う〜ん、楽しいというより、特訓だな、これは。
しばらく泳いでボートに上がると今度は「この下にウニいる。ウニ好きか?」と聞いてくる営業担当。
「ああ、いいね〜ウニ」
すると肉体労働担当がドブンと海に潜り、しばらくするとウニを持って海面に顔をのぞかせる。営業担当がボートの上でそれを受け取り、器用にナイフで明け、渡してくれる。とれとれのウニ。めっちゃ新鮮や(当たり前やけど)。
「おいしか?」
「うん、うまいね」
「じゃあ、もっと捕ってくる」
肉体労働担当は捕ってきては、営業担当にもっと捕ってこいと言われ、なかなかボートに上げてもらえない。
4個ずつぐらい食べたところで、さすがに「もう、充分だから戻ろう」と言ってやっと肉体労働担当はウニ捕りから開放された。

さあ、戻ろうかというところで、営業担当が見て欲しいものがあると言う。
ボートの足下から出してきた箱を開けるとそこにはサメの歯が並んでいた。
「ぼくたちボート漕いだ、ウニ捕ってきた、でもお金いらない。これお土産に買ってくれるだけでいい」
なるほどね〜、ただっちゅうわけもいかんやろしね。
「買ってもいいけどさ、いくらなの?」
「一万円です」
「いっ、いちまんえんとな?」開いた口が塞がらなかった。
一万円だよ一万円。サメの歯一本一万円。
「もっと安いのは無いの?」
「サメの歯、海の深いとこにしか無い、捕りに行くのとっても危険。じゃあ2個で一万五千円」
私はこめかみがヒクヒクするのを人さし指で押さえつつ、彼に言った。
「日本人、みんなお金持ちだと思ったら、それ間違い。日本物価高い。ボクの家、めちゃくちゃ狭い。ウサギ小屋って言われる。毎日働いて働いて、お金貯めてやっとここに来た。ベリーチープな日本人。ボクにとっても一万円はめっちゃ大金。わかる?」たたみかけるように彼に貧乏さを訴えた。
黙って聞いていた営業担当は「ボクたち友達、サメの歯買わそうとしてすまなかった」と言って、かえって同情してくれた。
貧乏というキーワードで結ばれた二人...。
しかし、そうやろ。どうしてサメの歯が一万円もするんよ。いくらなんでも高すぎる。
でもだまされて買う日本人多いちゅう事なんやろな。

私は肩を落とした彼に「じゃあさ、次ぎ来た日本人に2万円で売りなよ」と言って慰めた。