留置所日記9「護送車」
翌朝も「起床っ!」の声で目覚め、点呼が始まる。
「1号室1番!」
「おぃっ!」
3日も悪い人たちといると、私ももうすっかりその気。声も低くなり目つきも悪くなる。
朝食はまた食パン2斤とマーガリン。
食事も終わって10時頃、また呼ばれる。
「1号室1番!出なさいっ!」
手錠を掛けられ、並ばされる。
そして当番様が出した一本の太い縄。
当番様はみんなの手錠の中心にある一際大きな輪のところに、その縄を通していく。
そして、通し終わった所で、その縄を持って歩き出す。
電車ごっこ状態というか、引き回しの刑というか、まあそういう状態ですね。
みんな前の人とぶつからないように足並みを合わせて歩いていく。
“おいっちに、おいっちに”のタイミング。
そして警察署の裏駐車場へ。久しぶりの外や、空気がうまい。
裏の駐車場にはすでに護送車が待っていた。あのグレーの窓に網のかかったバス。
普段、あの車にはどんな悪い人が乗っとるんやろと思っとったけど…まさか自分がそこに乗るとは…。
護送車はまるで園児を迎えにいくスクールバスのように、各警察署を廻って悪い人々を拾いながら裁判所へ向かう。
途中通った神保町、当時の会社があったところ。みんな今頃普通に働いとんやろな…。思わず頭を低くする。